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用語 食・名物

べったら漬とは

べったら漬とは、塩で下漬けした大根を米麹と砂糖で甘く漬けた浅漬けで、東京・日本橋の秋の市「べったら市」の名物として知られる江戸生まれの漬物です。名前は、表面の麹が「べったり」と付くことに由来すると伝わります。麹をふんだんに使った、上品な甘みが持ち味です。

べったら漬の作り方と特徴を示す概念図:大根から塩漬け、米麹・砂糖で本漬けして完成するまでの流れと、たくあん・ぬか漬けとの違い

べったら漬の歴史・由来

べったら漬の始まりは、江戸時代のえびす講の市にあるとされます。えびす講は、商売繁盛の神・恵比寿を祀る10月20日の行事。その前夜の10月19日(もとは旧暦)、大伝馬町一帯には神棚や三方、供え物の魚などを売る市が立ちました。大根の浅漬けは、そこへ並ぶようになった品のひとつです。

この浅漬けを人々が好んで買ううちに、市そのものが「べったら市」と呼ばれるようになりました。つまり、名前は漬物が先で、市があと。いまもべったら市が開かれるのは、この大伝馬町かいわい、寳田恵比寿神社のまわりです。

では、江戸の人々は漬物を家で漬けていたのでしょうか。農林水産省によると、江戸の町なかでは家で漬けず、漬物屋で買うのが日常だったといいます。大所帯や裕福な商家になると、練馬村の農家と契約して一年分を仕込んでもらい、必要な分だけ配達してもらうこともありました。そんな江戸・東京の庶民に愛された漬物の代表が、たくあんとべったら漬です。

たくあん・ぬか漬けとの違い

同じ大根の漬物でも、べったら漬はたくあんとはずいぶん違います。たくあん(本たくあん)は、干した大根を塩と米糠で漬け、冬に漬け込んで翌年の春から夏まで食べる保存食です。一方のべったら漬は、塩で下漬けして半日ほど干した大根を、米麹と砂糖で1〜3日漬ける浅漬け。塩を効かせて長くもたせるたくあんに対し、べったら漬は麹の甘さが主役になります。

ぬか漬けも米糠を使いますが、こちらは塩と糠で乳酸発酵させた糠床に、野菜を数時間から1日ほど漬けるものです。べったら漬が使うのは、米糠ではなく米麹。米麹は蒸した米にコウジカビを繁殖させたもので、でんぷんを糖に変える力が強く、甘酒や米味噌づくりにも使われます。この麹こそが、べったら漬の甘みのもとといえるでしょう。

ひとつ注意したいのは、べったら漬は置いておくほど味が変わること。発酵が進むと酸味が強くなるため、漬け上がったら冷蔵庫で保存するのが基本です。

べったら漬けはいつ・どこで味わえる?

いちばんの本場は、やはり秋のべったら市。毎年10月19日・20日の二日間、寳田恵比寿神社を中心とした日本橋大伝馬町・日本橋本町かいわいに露店が並びます。2025年は、べったら漬けの露店30店ほどを含む約500店が出ました。

とはいえ、秋だけの味ではありません。大根の収穫に合わせて仕込むため、江戸時代は秋から冬にかけて食べるものでした。それが今では一年を通して食べられ、スーパーの漬物売り場にもさまざまな製造元の品が並ぶほど。農林水産省の「うちの郷土料理」でも、東京都の郷土料理として紹介されています。べったら市には、1930年創業の東京新高屋(にいたか屋)のように昔ながらの製法で作る店も露店を出すので、江戸の甘い浅漬けを一度試してみたいという人は、市の二日間を目当てにするとよいでしょう。

日本橋トピック♪べったら漬、もとの名前はただの「浅漬け」?

日本大百科全書によると、この漬物は元来、ただ「浅漬け」と呼ばれていました。べったら市が盛んだったころ、売り手は「ホラべったら、べったら。買わないで素通りすると着物につくよ」と、人ごみのなかで漬物を振り回したり、粕(かす)のついた手で袖を引いたりしたそうです。その呼び声から、「べったら漬け」の名が生まれたといわれます。農林水産省の「うちの郷土料理」が伝えるのも、よく似た話です。買った漬物を縄でくくって持ち歩く若い男性が、「べったり付くぞ」と女性に向けて振り回したから、というもの。一方、世界大百科事典は「こうじがべたつくところからの俗称」と説明しています。麹のべたつきと、それを面白がった市のにぎわい。どちらの説からも、江戸の秋の市の熱気が伝わってくるようです。

べったら漬に関するよくある質問

べったら漬けは家庭でも作れますか?
作れます。農林水産省の「うちの郷土料理」のレシピでは、塩をまぶして一晩おいた大根の水分を切って軽く水洗いし、甘酒と鷹の爪を合わせて密閉し、冷蔵庫で2〜3日置けば完成です。米麹と砂糖の代わりに甘酒を使う、手軽な作り方です。
べったら漬が白いのはなぜですか?
大根の皮を厚くむき、焼きミョウバンを溶かした水に漬けて下漬けし、白く仕上げる作り方があるためです。

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