黒江屋とは
黒江屋とは、東京都中央区日本橋に店を構える漆器の老舗です。創業は元禄2年(1689年)とされ、日本橋のたもとで300年以上にわたり漆塗りの器を扱ってきました。椀や重箱から茶道具まで、暮らしの中の漆器をそろえる一軒です。
屋号の「黒江」は、紀州の漆器の里の地名
「黒江屋」という名前は、人の名字ではありません。初代が、紀州(今の和歌山県)の漆器の産地として知られた黒江村から江戸へ出てきたことにちなみます。黒江村は黒江塗(くろえぬり)と呼ばれる漆器の里で、その地名がそのまま屋号になったとされています。
創業は元禄2年(1689年)。はじめは日本橋本町のあたりに店があったと伝わります。安永3年(1774年)には創業家が紀州へ帰り、京の商人だった柏屋孫左衛門に店が引き継がれました。このとき店は今の日本橋一丁目へ移っています。「創業1689年」は店の始まりの年であって、同じ一族がずっと続けてきたわけでも、今の建物が当時のものというわけでもありません。長い年月の中で担い手も場所も移りながら、屋号と漆器の商いが受け継がれてきました。
大名の器から、ワイングラスまで
黒江屋は江戸時代には大名向け、明治には華族向けの高級な漆器を手がけてきました。関東大震災のあとからは、ふだん使いの器も広く扱うようになったとされています。今では椀や箸、盆、重箱、茶道具など、暮らしの中で使う漆器が数多くそろうお店です。
伝統的な品ばかりではありません。ワイングラスやワインクーラー、アクセサリーといった、漆を現代の暮らしに合わせた品も並びます。漆器を「特別な日のもの」と思っている人ほど、その幅広さに驚くかもしれません。店は中央区日本橋1丁目、黒江屋国分ビルの2階にあります。
Topic店先のショーケースに、江戸の日本橋のかけらがある?
黒江屋のビル2階の入口には、古い金属の飾りがガラスケースに収められています。これは、まだ木の橋だった頃の日本橋の欄干を飾っていた擬宝珠(ぎぼし)です。ねぎ坊主のような形をした、橋の柱の頭の飾りのこと。表には「万治元年戌戌年九月吉日 日本橋御大工椎名兵庫」と刻まれており、万治元年は1658年にあたります。戦後まもない昭和21年、バラック店舗で商いを再開していた黒江屋を骨董品屋と勘違いした人が売りに持ち込み、「これも何かの縁」と引き取ったのが始まりだと伝わります。今の石の日本橋になる前の、江戸の橋の本物のかけらが、漆器店の店先にひっそり残っているわけです。
黒江屋に関するよくある質問
- 黒江屋はどんな人が漆器を選びに訪れるお店ですか?
- ふだん使いの椀や箸を探す人から、贈り物や茶道具を求める人まで幅広く訪れます。漆器になじみのない人でも手に取りやすいワイングラスやアクセサリーもあるため、最初の一品を選ぶ場としても向いています。
- 黒江屋では今も漆器を買えますか?現代的な品もありますか?
- 現在も日本橋1丁目の黒江屋国分ビル2階で営業しています(2026年6月時点確認)。椀や重箱、茶道具などの伝統的な漆器に加え、ワイングラスやアクセサリーといった現代的な品も扱っています。
- 黒江屋の店先にある古い飾りのようなものは何ですか?
- 木の橋だった頃の日本橋の欄干を飾っていた擬宝珠(ぎぼし)です。万治元年(1658年)の刻印があり、戦後に売りに持ち込まれたものを引き取って、今もビル2階のショーケースに展示しています。
