麒麟像とは
麒麟像とは、東京都中央区の日本橋(橋)の上に置かれた青銅製の装飾彫刻で、橋の中央にある大きな飾り柱の左右に向かい合って座る、伝説の霊獣・麒麟をかたどった像です。背中に翼のように見える背びれを持つ、ちょっと不思議な姿が特徴で、橋を訪れる人がまず目を留める見どころになっています。
いつ、誰がつくった像なのか
今の日本橋は、明治44年(1911年)に完成した石造りのアーチ橋です。江戸時代から数えて何度も架け替えられてきた橋の、現在の姿にあたります。橋全体の装飾デザインをまとめたのは建築家の妻木頼黄(つまき よりなか)で、麒麟像と獅子像の原型を手がけたのは彫刻家の渡辺長男(わたなべ おさお)でした。
青銅へ仕上げる鋳造は、渡辺長男の義理の父である岡崎雪聲(おかざき せっせい)が担当したとされています。橋そのものは平成11年(1999年)に国の重要文化財に指定されました。土木の技術者と建築家、彫刻家が力を合わせてつくった、明治の装飾橋の代表例として評価されています。
なぜ翼があるのか、何を表しているのか
麒麟は中国から伝わった想像上のおめでたい獣で、本来は翼を持ちません。それなのに日本橋の麒麟には、翼のような背びれがあります。これは日本中の道路の起点である日本橋から、いざ飛び立っていくイメージを込めたものとされています。今でいえば、全国の幹線道路が伸びていく「0キロ地点」から空へ羽ばたく姿でしょうか。
橋の中央に置かれた麒麟像は、完成した当時の東京の繁栄を表しているとされています。さらに左右の麒麟は表情が違い、片方が口を開け、もう片方が口を閉じた「阿吽(あうん)」の対。神社の狛犬や仁王像と同じ組み合わせで、街歩きのときに左右を見比べると、その違いに気づけるでしょう。
獅子像との違いと、橋での探し方
日本橋には麒麟像のほかに獅子像もあり、よく混同されます。見分けの目印は置き場所です。麒麟像は橋の中央、獅子像は橋の四隅と分かれています。獅子像は東京市の紋章を盾のように抱え、橋を守る役目を表しているとされ、この紋章は昭和18年(1943年)から東京都の紋章として受け継がれました。
麒麟は繁栄、獅子は守護。同じ橋の上で役割が分かれていると知ると、橋を渡る時間がぐっと面白くなるはずです。日本橋川にかかるこの橋は今も歩いて渡れます。上を通る首都高速道路を見上げながら、足元の麒麟と獅子を探してみてはいかがでしょうか。
Topic左右の麒麟、口元をよく見ると違うのはなぜ?
麒麟像は左右で同じに見えて、実は口元が違います。片方は口を開き、もう片方は口を結んだ「阿吽」の対になっているからです。仏像の仁王や神社の狛犬と同じ考え方で、物事の始まりと終わりを一対で表すといわれる組み合わせ。本来は翼のない麒麟にあえて翼のような背びれを添えたのも、道路の起点から飛躍するという願いを形にしたためとされています。橋を渡るときに左右の口元を見比べてみると、つくり手の遊び心に出会えるはずです。
麒麟像に関するよくある質問
- 麒麟像と獅子像は、橋のどこを探せば見分けられますか?
- 置かれている場所が違うのが目印です。麒麟像は橋の真ん中の大きな飾り柱に、獅子像は橋の四つ角にあります。役割も分かれていて、麒麟は街の繁栄、獅子は守りを表すとされています。
- 日本橋の麒麟は、ビールのキリンと関係がありますか?
- どちらも同じ伝説の霊獣・麒麟が元になっていますが、直接の関係はありません。橋の像は明治44年(1911年)に橋の装飾としてつくられたもので、企業のシンボルとは別物です。
- 麒麟像は誰でも自由に見られますか。料金はかかりますか?
- 日本橋は今も歩いて渡れる一般の橋なので、料金はかからず無料で見られます。橋の上から、足元の麒麟像や四隅の獅子像をゆっくり眺められます。
