東京・日本橋エリアのいちばん北側にある「馬喰町(ばくろちょう)」。
JR総武快速線の馬喰町駅、都営新宿線の馬喰横山駅、そして都営浅草線の東日本橋駅が地下通路でつながっていて、とてもアクセスのいい場所なのですが…
初めて駅名を見た人の中には「え、馬を食べるってこと?」「ちょっと名前が怖い…」と感じる方がいるのも事実です。
字面だけ追うとどうしてもそう読めてしまいますよね。
X(旧Twitter)などでも、「馬喰町って名前怖くない?」という投稿が定期的に流れてきます。
実際に「馬喰町 名前 怖い」で検索してくる方もいるくらいです。
でも、歴史をたどっていくと「馬を食べる」どころか、むしろ江戸の交通と軍事・流通をささえたすごく由緒あるお仕事に由来する地名なんです。
しかもこのあたりはここ数年でカフェやアートギャラリーが増えて、クリエイターさんが集まる注目エリアにもなっています。
なので今回は、
- なぜ「馬喰町」というちょっと怖い名前になったのか
- 江戸時代から続く由来と歴史
- いまの馬喰町ってどんな街なのか(治安も含めて)
- 実は全国にある「馬喰町/博労町」との関係
- 2024〜2025年ごろの最新スポットやイベント
といったところを、とーんと♡日本橋編集部らしく、怖くないように・わかりやすく・ちょっとワクワクするようにお届けします!
【「馬喰町の名前が怖い」と言われる理由と本当の意味】
まずは、いちばん多い疑問から。
実際にSNS(X)を見てみると、馬喰町の名前に「ちょっと怖い」と感じる人が一定数いることが分かります。
「馬喰町って、字面だけ見たら怖くない?」
「“馬を喰う町”なのかと思ってた…😨」
「駅の雰囲気と名前が相まって、なんか不気味に感じる時ある」
中には、名前の由来を知らないまま、
- 「馬を食べていた地域?」
- 物騒な歴史があるのでは?
- 差別用語が由来なのでは?
と、少しセンシティブな方向へ連想が膨らんでしまうケースも見られました。
なぜここまで「名前が怖い」と言われるのか?
理由はかんたんで、漢字だけ見ると「馬+喰」なので“馬を食べる”と読めてしまうからです。
読み方も「ばくろちょう」でちょっと聞き慣れない音なので、初見でインパクトがあるんですよね。
ですが、
ここで大事なのはこの“馬喰(ばくろう)”は「食べる」という意味ではないということ。
実はこの言葉、ものすごく古いところまでさかのぼれる専門職なんです。
中国の古典に出てくる馬を見る天才「伯楽(はくらく)」が語源で、それが日本に伝わる中で
伯楽(はくらく)→ 博労(ばくろう)→ 馬労(ばろう)→ 馬喰(ばくろう)
と音に合わせて表記が変わっていきました。
つまり「馬喰町」は、ざっくりいうと“馬の目利き・売買をしていた人たちが住み、仕事をしていた町”という意味なんです。
なので、怖い名前どころか、当時の江戸を動かすには欠かせない“プロフェッショナルの町名”だった、と言ったほうが近いですね。
実際、今も「馬喰町 名前 怖い」と検索する人の多くは「地名がちょっと怖そうに見えたから理由を知りたい」「治安も悪いのかな?」という不安から調べています。
でも、由来さえ知ってしまえば「え、むしろカッコいい名前じゃない?」となるはずです。
【馬喰町の歴史と名前の由来をもう少し深掘り】

ここからは“怖い”を“なるほど”に変えるパートです。
馬喰町の成り立ちは、だいたい天正年間(1500年代末〜1600年前後)までさかのぼります。
江戸に幕府ができる少し前から、ここには幕府の「博労(馬喰)」と呼ばれた人たちのトップ(博労頭)が住み、馬の管理をしていたとされています。
なかでも有名なのが高木源兵衛(たかぎ げんべえ)さん。
この人がこの一帯にあった「初音の馬場」という馬場を管理していて、この場所が“馬に関わるエリア”として定着していったんですね。
「初音の馬場」ってなに?というと、いまの馬喰町あたりにあった、馬を並べたり調教したり、いわば“江戸の公式馬グラウンド”のような場所。
名前は近くにあった初音稲荷に由来していて、うぐいす(鶯)の初音がよく聞こえる場所だったとも言われています。ここで馬をそろえたり、馬の良し悪しを見極めたりするので、当然馬を見るプロ=博労たちが住みつくようになります。
さらにおもしろいのは、徳川家康が関ヶ原の戦いの前にここで「馬揃え」をしたという伝承が残っていること。
出陣前に馬や兵をずらっと並べてチェックする大事な儀式で、そこに馬の目利きをする博労たちがいた──と考えると、この場所がどれだけ“江戸の始まりと近いところにいたか”が伝わってきます。
そして時代が下ると、表記が「博労町」→「馬喰町」と変わっていき、今の地名に落ち着いたと言われています。
音はずっと同じ「ばくろうちょう」なので、当時の人たちも「博労の人たちがいるところね」という理解だったはずです。漢字だけ後から見た私たちが「馬を食べる…?」と誤解しているだけなんですね。
ちなみにこの“馬喰”という仕事は、馬や牛の売買・仲介をするだけでなく、ちょっとした診療や調整もする、いま風にいえば「馬のバイヤー兼トレーナー兼アドバイザー」のような存在でした。
だからこそ、江戸という大都市を動かすには欠かせなかったのです。
【「馬喰町は怖い街?」に答えます|治安といまの街の雰囲気】

「名前の見た目はわかったけど、実際は住みやすいの?」「夜は怖くない?」という心配もあると思います。ここがいちばん検索されているところですね。
結論からいうと、馬喰町は“名前は強そうだけど中身はわりとおだやかで住みやすい街”です。中央区の犯罪発生率も23区内では高くない水準で、馬喰町周辺で見られる事件の多くは自転車盗や置き引きなどの軽めのものが中心。凶悪犯に分類されるようなケースは少なく、夜もオフィス街なので人通りは落ち着きます。最近もこの傾向は大きくは変わっていないように見えます。
加えて、馬喰町はJR総武快速線・都営新宿線・都営浅草線がほぼ同じエリアで乗り換えできるという、都心でもなかなか無いレベルの交通の良さがあります。東京駅方面にも、成田空港方面にもスッと出られるので、ビジネスパーソンやクリエイターさんが事務所を構えるケースも増えてきています。
駅からすぐのところにコンビニ・スーパー・ドラッグストアがまとまっているので、暮らしやすさも◎。
むしろ女性の一人暮らしで「都心に住みたいけど、にぎやかすぎるのはちょっと…」という人にも向いているエリアです。
ちなみに、馬喰町の治安が気になる人は以下の記事をご覧ください!
関連記事:馬喰町の治安は悪いのか色々と調査|警察の場所もチェック【住むにはどうなのか】
【いまの馬喰町には何がある?問屋街+おしゃれカフェ+アートの街】
「名前は怖くないことはわかった。で、実際に行ったら何があるの?」という方へ。
ここが一番楽しいところです。
馬喰町はもともと日本最大級の問屋街として知られていました。
関連記事:「日本橋馬喰町1丁目」は何があるのかをご紹介いたします!【橫山町問屋街も】
タオル・傘・手ぬぐい・旗・婦人服・雑貨など、プロ向けのお店がずらっと並びます。
平日の日中はバイヤーさんや小売店の方が仕入れに歩いているので、独特の活気があります。
そこにここ数年、リノベした古ビルを使ったカフェやコーヒースタンド、ギャラリー、コワーキングが増えてきたんですね。たとえば、
■ bakuro COMMON(バクロコモン)
おしゃれな内装で、ランチから夜の一杯まで使える万能カフェ&ダイナー。『メレンゲの気持ち』でも紹介されたことがあります。(食べログはこちら)
■ BERTH COFFEE
食べログ3.59(記事執筆時点)の人気店!(食べログはこちら)
など、コーヒー好きさんが「馬喰町、意外と良い…!」となるお店がじわじわ増えています。
さらに2024〜25年にかけては、
- Bridge COFFEE & ICECREAM(アイスも食べられるカフェ)
- 丸の内から移転してきたセレクト系ショップ「lelill 東京」
- 駅徒歩1分で使いやすい「アクセアカフェ 東神田」
- 韓国ごはんが楽しめる「しろや日本橋」
といった新しいスポットも登場していて、「昔ながらの問屋街」と「新しいクリエイティブ」が同居する街になってきました。
飲食でいえば、編集部イチオシの隠れ家
■ ともすけ(ともすけ (tomosuke.jp))
住所:東京都中央区日本橋小伝馬町20-4 東洋ハットビル1F
アクセス:馬喰横山駅から211m
…と、ちょっと駅から歩くけれど料理がおいしくて雰囲気のいいお店も。

■PARCEL
そしてアート好きさんにぜひ行ってほしいのが、DDD HOTELの一角にある「PARCEL」です。
元立体駐車場を改装したおしゃれギャラリーで、国内外で活躍する作家さんの企画展をひんぱんにやっています。無料で入れるので、カフェとセットで巡るのもおすすめです。
…と、ここまで見るともう「名前が怖い街」ではなく「昔から馬に関わる人がいた、ちょっと渋くて新しいものが混ざっている街」に見えてきませんか?
【実は全国にある「馬喰町」「博労町」】
「こんなに印象的な名前なら東京だけだろう」と思いきや、じつは日本各地に「馬喰町」「博労町」と名のつく場所があります。たとえば──
・京都府京都市上京区馬喰町
・愛知県名古屋市西区馬喰町
・青森県弘前市の馬喰町
・秋田県大館市の馬喰町
・群馬県沼田市馬喰町
読み方は「ばくろちょう」「ばくろまち」「ばくろうまち」など土地によって違いますが、もとをたどると“馬の売買・仲介をしていた人たちのところ”という意味でつけられたケースが多いといわれています。
日本橋の馬喰町だけが特別に怖い名前、というわけではないんですね。
さらに「博労町」「白楽町」といった、同じ語源を持つと考えられる地名も全国にあります。
つまりそれだけこの仕事が日本各地で必要とされていたということ。江戸時代の物流ってやっぱり馬が主役だったんだなあ…と実感するポイントです。
【まとめ|「馬喰町 名前 怖い」で来た人に伝えたいこと】
最後に、この記事のいちばん大事なところをぎゅっとまとめますね。
- 「馬喰町」が怖く見えるのは漢字がたまたまそう見えるだけ。意味は「馬の目利き・売買をしていた人たちの町」です
- 由来は中国の名馬鑑定人「伯楽」→「博労」→「馬喰」と変化してきた歴史的なもの
- 徳川家康の関ヶ原出陣ともつながる、江戸のはじまりに関係する場所でした
- 治安はおおむね良好で、交通の便もよく、女性の一人暮らしやオフィスにも向くエリアです
- 問屋街の渋さと、カフェ・ギャラリーなど新しいお店の両方が楽しめるので、散策がたのしいです
なので、最初に「名前が怖い…」と思った方も、ぜひ一度ふらっと歩いてみてください。問屋街のにぎわいの中に、ちょっとしたリノベカフェやギャラリーが現れて、写真を撮りたくなるスポットもいっぱいあります。夏には大江戸問屋祭り、春には日本橋くされ市のような歴史イベントもあって、街全体の“昔からここで商いをしてきた”という空気を体感できますよ。
当サイト『とーんと♡日本橋』では、こうした「名前は知ってるけど、実はよく知らない日本橋の街」の話題を他にも紹介していますので、ぜひお読みいただき“日本橋がもっと好きになる”きっかけにしてくださいね!

